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「IISIAプレップ・スクール」の第4回授業

去る7月25日(金)、東京・国立のIISIAオフィス内セミナー・ルームで
「IISIAプレップ・スクール」第四講が開講されました。
科目は「金融英語」。
教鞭を執ったのは翻訳・通訳のプロ、川上純子講師です。

現在、最も情報が集まるのが金融の世界。
そして、その金融の中心地が米国・英国といった英語圏です。
となると、情報リテラシーを身に付けるためには
「金融英語」を避けて通ることはできません。

しかし、金融英語とは具体的に何なのか?
そして金融英語を読み解くスキルとは? 
実際の読解演習も行われた授業の様子をご報告します。


●課題発表とコメント

まずは学生たちの課題発表。
班ごとに、事前に与えられた課題のプレゼンを行います。

今回の課題は、5月に世界銀行が発表した“ The Growth Report ”を読み、
その内容を前提に改めて「ワシントン・コンセンサス」と「構造改革」の
それぞれを吟味するという趣旨のものでした。

今回もしっかりと調べ物を行い、その成果を踏まえてプレゼンを行う学生たち。
特に「構造改革」に関しては、その帰結として
「格差社会」化が生じている点につき、データを示し、
また時系列的に論じていきました。

発表を聞き終わった後、IISIA CEO・原田武夫は次のようにコメント。

「『構造改革』や『規制緩和』とその帰結については
調べてもらった通りだと思う。
だが、そのことが今、極めて喧しくメディアで書きたてられている
ことについて意識的になる必要もある。
いわば『構造改革』や『規制緩和』とは逆向きの潮流、
そしてそれに連なる人脈が力を持ち始めているということだが、
単に再分配の政治に戻ればいいということではないはずだ。」

言論の「風向き」はより大きな社会・経済的な構造変化を指し示すものである。
言論の内容に加え、どのタイミングでそれが発されたのか、
またそれはなぜなのかといったことへの鋭敏なセンサーを
育てることが「情報リテラシー」の基本である…。

発表の時点では「格差社会」の是非にのみ議論が傾きがちだった学生たち。
IISIA CEO・原田武夫によるメタな視点の提示を受け、
これは「情報リテラシー」を学ぶ授業なのだ、と改めて
痛感していたようでした。


●「金融英語」を読むときに知っておくべきこと

休憩後、川上純子講師による「金融英語」の授業が始まります。

「金融英語」といっても必ずしも金融業界内部で使われる英語の
マスターを目指すわけではなく、またその必要もない。
重要なのは、広い意味で「金融」が絡む海外ニュースを
正確に読みこなせるようになること。
そのためには英語力ももちろん大切だが、予め英文金融記事の
構造や、それぞれのメディアの特性を知っておくべき…。

このような説明の後、川上講師は
「フィナンシャル・タイムズ(FT)」、「エコノミスト」といった
英語圏の有力メディアの特徴を詳しく見ていきます。

日本の金融メディアとの一番の違いは、記者・編集者が
ほぼアカデミシャンに近い学問的バックグラウンドを持っていること。

歴史学や哲学のPh. D取得者が、明快なロジックに
巧みなレトリックを織り交ぜて紡ぐテクスト。
とりわけ、「エコノミスト」はその傾向が強いとのことでした。

だからこそ、英文金融記事の書き手と読み手が共有している
文化的コンテクスト=教養をも身につけていく必要があるのです。

このように、個々の記事の背景をなす「金融英語」全体について
丁寧な説明がなされた後、いよいよ実際の英文読解に入ります。

事前課題として、受講生には英文テキストが配られ、
指定部分の和訳が課されていました。

一人ひとりを指名し、質問をしていく川上講師。
学生たちはいくぶん自信なさそうにしながらも、
用意してきた和訳を読み上げていきます。

さすがは有名大学の試験を突破した学生たちだけあって、
英文の構造把握はほぼしっかりとできています。
しかし、それを自然な日本語に置き換える段になると、
そううまくはいかないようです。

日々、まさに翻訳を通じてこの苦労を知りぬいている川上講師。
学生たちに、次のようにコメントします。

「皆さんに言っておきたいのは、自分の母国語以上の
外国語は決して身につかないということです。
英語に限らず、外国語を学ぶ場合は、日本語での理解・表現能力を
しっかりと鍛えておく必要があります。」

これから否応なしに金融にも英語にも関わっていくであろう学生たち。
そんな彼ら彼女らにとって、外国語での情報収集も、単なる語学を超えて
文字通り総力戦であるということが痛感されたようでした。
そしてまた、だからこそ面白さもある。
川上講師の授業そのものがそのことを実に説得的に語っていました。

「IISIAスキルアップ・スクール」の第4回授業

翌7月26日(土)。
社会人を対象とする「IISIAスキルアップ・スクール」授業日です。
科目は前日同様「金融英語」。

学生に比べて、しっかり語学をやっている時間がない。
にもかかわらず、投資で、ビジネスで、常に海外動向に注意を払う必要がある。
そんな社会人受講生たちに、川上講師はどんなスキルを示すのか。
「IISIAプレップ・スクール」同様、英文和訳の事前課題も出ており、
受講生たちは緊張した面持ちで授業の開始を待っていました。


●「この先」を考える姿勢

まずはIISIA CEO・原田武夫が教壇に立ち、
個人課題へのコメントを行います。

この課題は、「IISIAプレップ・スクール」でも扱われた
“ The Growth Report ”(2008年5月に世界銀行が発表)の抜粋を読み、
「ワシントン・コンセンサス」および「構造改革」の過去と現在について
検討することを目的としたものでした。

「今回の皆さんの提出課題を見るに、
これまでの流れと、“ effective government “の必要を説く
このレポート(“ The Growth Report ”)の趣旨を
よく理解なさった上で論を組みたてられたようですね。
その上で重要になってくるのが、これからどうなるのか、
この先にどんな『潮目』があるのかということです。」

そして、「この先」を考える際に外せないのが目下の米国大統領選挙。
方々で勝利が予想される米国民主党ですが、重要なのは、
民主党政権の成立はマーケットにどのような変化をもたらすのかということ。

その一つとしてIISIA CEO・原田武夫が挙げたのが、米国における
「貯蓄」観の変化。
米国といえば「消費は美徳」というイメージがありますが、
その米国で貯蓄を奨励する動きが出てきている。
“ The Growth Report ”が政府の必要性を強調していることと、
この貯蓄観の変化は、どのように対応し、今後の流れを決定づけているのか…。

時を同じくして起こっている事象。
その背後の巨大な動きと、「この先」を常に考えながら公開情報に接すること。
情報に接する際の能動的な態度こそが予測分析の要諦である…。

これまでの授業を通じて、IISIA流の「情報リテラシー」に
だいぶ慣れてきた受講生たち。

まさに「この先」を考える姿勢から、IISIA CEO・原田武夫に対し、
活発に質問を投げかけていました。


●実践を想定したトレーニング

IISIA CEO・原田武夫によるイントロダクションが終わり、
川上純子講師による「金融英語」の授業が始まります。

前日の「IISIAプレップ・スクール」同様、金融英語を
読み解く際の背景知識をわかりやすく示していきます。

マーケットの動きを見る際に欠かせない有力英語メディアの特徴を
紹介した後、実際に記事を読む上での注意事項に触れる川上講師。

「英語の記事は、非常にはっきりした構成でできています。
冒頭部に内容を凝縮した文が置かれ、その後に
裏付けとなる事実の指摘や、予め想定される反論と
その吟味の部分が続きます。
そして結論部で、伝えるべきポイントについて
再度言及があるわけです。」

英語メディアの書き手たちが、高等教育課程以来
徹底的に叩き込まれる文章構成のスタンダード。
それを意識し、ある文が全体の中で
どのような機能を担っているのかを
考えつつ読むことで、記事の論旨を違えることなく
把握することができる…。

まずはこの基本を押さえるように薦める川上講師。
しかし、例外があることの指摘も忘れません。

「ある程度、記事の構成がわかってくると
内容理解のスピードも上がってきます。
けれども、注意しなければいけないのが、
それまでの記事の内容に反する文章が
記事の最後に唐突に現れる場合。
それほど数が多いわけではありませんが、
たまに記事の末尾で驚くべきヘッジをかけているものもあります。

ざっと大まかな内容を捉えることも大切な技術ですが、
細かい部分に注意しなければならない場合もあることに
気をつけてください。」

ストレートな情報伝達という印象の強い時事報道。
しかし、そこには書き手が意図するか否かに拘わらず、
何らかのかたちで解釈や分析が入りこんできます。

そうした点に敏感になるべきだという川上講師の指摘には、
日々「金融英語」と接している翻訳のプロならではの
リアリティがあります。

また、こちらも前日同様行った実際の読解においても、
類似した意味を持つ単語の訳し分けなど、内容理解に影響を
与える重要なポイントを丁寧に説明していました。

一通り授業が終了した後の質疑応答では、
更なるスキル・アップのための勉強法や
授業で扱った英文記事に対する質問が殺到。

忙しい中でも、「金融英語」を読み解いていくことの
重要性と楽しさに、改めて気づいた様子が窺われました。

次回授業はついに最終講。
受講生たちがこれまでの授業でいかに成長したかを試す修了試験です。
ご報告を楽しみにお待ちください。

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